「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」
花村萬月原作の「ゲルマニウムの夜」に続く、大森立嗣の監督作「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」。タイトルとそのメインビジュアルから察するに、きっと重たい青春映画。松田翔太、高良健吾、安藤サクラと旬な役者が顔を揃えた。
孤児院で兄弟のように育ったケンタとジュン。二人の仕事は、ひたすら壁を壊すだけの解体工事である。そして低賃金で重労働、先輩による陰険ないじめが辛い現実に拍車をかける。そんな社会の底辺で生きる彼らはある日、全てをぶっ壊そうとケンタの兄がいる北を目指す。そこに、誰にも愛されることのないブスでバカのカヨちゃんもついてくる。
物語はケンタとジュンのロードムービーを中心に進む。そこでふと、この二人に現代の若者が感情移入するのは難しいかもしれないなと思った。孤児院育ちの二人は、もちろん非現実的ではないが、多くの人が共感するには不幸な境遇すぎる。だから“気分”だけでも二人と一緒に旅をしようと思うのだが、2人の悲しみや憎しみを、どこか他人のものとして受け止めてしまうのだ。だからそこでカヨちゃんがキーポイントになってくる。カヨちゃんは三人の中で一番、マジョリティな若者を体現している。少しハズれすぎている感も否めないけど、“愛されること自体”に自分の価値を見出す風潮は、まさに今だ。ひとをどれだけ愛するかではなく、ひとにどれだけ愛されるかで自分の価値を決める。悲しいけど、ローリスクローリターンの後者が圧倒的な今ではないか。
三人の芝居は鬼気迫るものがあって、生ぬるい嘘は感じさせない。ケンタとジュンがイケメンすぎるのは気になるけど、高良健吾の孤児っぽさは見事だし、安藤サクラのホラーばりの表情がスクリーンいっぱいに広がると、思いのほか胸を打たれる。だけど、孤児院、いじめ、重労働とヘビィなエレメントだけが先行して、三人がどんどん遠くなっていく。そしていつしか何も残さずに消えてしまう。カヨちゃんだけがかすかな光として残る。
とにかく“ぶっ壊す”という意気込みのもと、ひたすら北を目指すケンタとジュン。たとえぶっ壊せなくても、ほかに道がなくても、地球はまわっていくもんな。
ラスト、失速するのが残念。最後の15分ばかり、ばっさりなくてもいいと思う。
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