「ACACIA」
ミッキー・ローク渾身の「レスラー」を、日本でやるとこういう感じなのか? 元プロレスラーのアントニオ猪木が初主演する「ACACIA」。作家・ミュージシャンなど幅広く活躍する辻仁成が、監督・原作・脚本を一挙に手がけている。
寂れた団地で静かに余生を過ごす、元覆面プロレスラーの大魔神。息子に充分な愛情を注げなかったことを悔やむ大魔神のところに、母親に捨てられた少年タクロウが転がり込んでくる。この展開には結構無理がある。そしてタクロウと親子のように暮らし始めた大魔神は、やがて自らの家族とも向き合うことになる。
ひねりなどは特になく、なかなか都合のよい展開である。ここまでくると、潔さを感じるほど。アントニオ猪木の第一声、最初の台詞を聞くと、「あちゃあ!」と顔を覆いたくなる。そこまで下手です。だけどこれが不思議なもので、見ているうちに(撮影が進むうちに)、彼の芝居がどんどんうまくなっていく。芝居というか、絶対的な存在感と味のあるキャラクターで、見ていて違和感がなくなってくる。やっぱり猪木はすごいのだ…。
これは監督のプライベートフィルムといっても過言ではないだろう。監督は、離れて暮らす前妻(南果歩)との間に授かった息子に届けたかったのだと思う。ただ、その重さがあまり響いてこなかった。ロークの「レスラー」には、「レスラー」ゆえの哀愁がぷんぷんと漂っていた。現役と引退の差はあるかもしれないが、アントニオ猪木のレスラー臭が、ミッキー・ロークのそれに劣る。レスラーをキャスティングするなら、それゆえの哀愁や葛藤をもっと出してほしかった。もちろんレスリングの映画じゃないのだから、レスリングのシーンをということではない。それか、いっそのこと奥さん役に倍賞美津子(本当の元妻)を配役して欲しかった。すごく見ごたえありそう…。
でも、やっぱりアントニオ猪木ってオーラがあるなぁ。でも、タイトルの「ACACIA」ってのはいまいちピンとこなかった。
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