「春との旅」
小林政広監督は、映画作りに貪欲である。近年、「バッシング」「愛の予感」「ワカラナイ」と話題作が続き、今回の「春との旅」。このラインナップをこのペース、貪欲じゃないと身がもたなそうだ。
4月の北海道。海辺の掘っ立て小屋。孫の春に面倒を見られながら静かに余生を過ごしていた元漁師の忠男は、春の将来を考え(なかばいじけるように)人生最後の住まいを求め、親戚縁者を訪ねる旅に出る。春は忠男の後を必死に追う。その旅でそれぞれが家族との確執や過去と対峙し、人生そのものをじっくりと見つめ直すことになるのだ。主演は日本を代表する名優・仲代達矢共演に徳永えり、大滝秀治、菅井きん、田中裕子、小林薫、柄本明、香川照之と、かなりの豪華キャストが揃う。なんか大作感。
小林監督は人物を、まずは歩くことと食べることで描写しようとしている気がする。歩き方と食べ方。確かにその人柄がよく出る。忠男の歩き方、春の走り方。これは最初から最後まで延々と繰り返される。だってそれが人間の生命の営みなんだもの、仕方ない。このシークエンスを眺めているだけで、これまでの2人の人生がみずみずしい映像となって頭に浮かんでくるような感触を味わう。この演出、描写力が作品の揺るぎない柱となっている。
奇をてらうこともなく、ひいき目でもなく、批判するわけでもなく、カメラはひたすら2人を追い続けていく。このカメラ(視線)に耐えられるのが、仲代達矢なんだ!と思った。そして徳永えりの芝居も想像以上にかなりいい。イラつき、憐れみ、思いやり、焦燥、慈しみ、それはもうぐちゃぐちゃの感情が入り乱れる旅なのだ。国家にも政治にも世間にも干渉されない、2人だけの旅。生活がかかっている旅。出会う人、すれ違う人は多けれど、やっぱり2人だけの旅。人生の春を探しに行く旅。
「ワカラナイ」に続き、音楽がいい!
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