第82回米アカデミー賞のBGA的総評
3/8(日本時間)。
下記の結果とともに、第82回米アカデミー賞は静かに閉幕しました。
1番のサプライズは、やっぱり作品賞の「ハート・ロッカー」。
作品は「アバター」で、監督賞に「ハート・ロッカー」だと思っていたので、ちょっとびっくりしました。
ここでしばし「アカデミー賞」って、そもそも何だろうと考える。
業界最大手の”映画の祭典”であり、映画ファン大興奮のお祭りであり、映画文化の存続をかけたおおきなプロモーションイベントである。
映画ファンが増えれば、映画の興行収入も上がる。
だから協会は、授賞式の視聴率を上げるため、派手なパフォーマンスや、ノミネート作品を増やすなどの措置を取る。
(去年のヒュー・ジャックマンの司会に比べると、今年はかなり地味な年でしたが)
でも、これは至極、自然なことです。
お金ないと映画作れないし、お客さんにお金払ってもらわないと次の作品も作れないのですから。
そのシステムを踏襲して、作品の純粋なクオリティーというより、作品がどれほど映画業界を活性化できるポテンシャルがあるか、それが問われるのがアカデミー賞だったはず。
でも今回はどうだろう?
これまでの流れなら、「アバター」の可能性はかなり高かったはず。
ん? もしやアカデミー賞は、変わろうとしている?
ここで、近年のものから順に過去の作品賞を振り返ってみよう。
第81回「スラムドッグ$ミリオネア」
第80回「ノーカントリー」
第79回「ディパーテッド」
第78回「クラッシュ」
第77回「ミリオンダラー・ベイビー」
第76回「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」
第75回「シカゴ」
第74回「ビューティフル・マインド」
第73回「グラディエーター」
第72回「アメリカン・ビューティー」
第71回「恋におちたシェイクスピア」
第70回「タイタニック」
「タイタニック」は、アメリカ人はおろか日本人ですら映画を見る人ならほとんどが目を通した作品だと思う。壮大なスケールで描いた純・悲恋モノとして多くに人の心をつかんだと思うし、レオ様というスターも生んだ。色々な方々で映画業界にとって”貢献映画”なのである。
その後に続く作品もそうだ。
自国批判のような皮肉めいた作品もあるが、基本的にエンタメ性とクオリティのバランスをうまく保っている。
しかし近年は、「ノーカントリー」ときて「スラムドッグ$ミリオネア」である。
地味なクラシックから、ハリウッド圏外×非アメリカ人監督の作品まで、米アカデミー協会は受け入れ始めた。そして今年の「ハート・ロッカー」。
女性初のオスカー監督の誕生ともなった。
オバマ政権以来、やっぱりアメリカは「CHANGE」を求めている?
言うまでもなく、「アバター」はこれまでにずいぶん稼いでいるし、ここで「ハート・ロッカー」にオスカー像を添えて、もっとこの作品に観客を動員してほしいと思う。
これは多くの人の願いだと思う。
個人的にいえば、このアカデミー賞の流れは正直うれしい。
低予算の作品にもオスカーという大きな希望が持てるし、ノミネート作品の増えた枠の一部はこれまで見逃されてきた秀作インディーズ作品のものとなるかもしれない。
ただインテリ映画ファンがお高くとまるハイソな賞なのか、アカデミー賞は?との懸念もある。
あわせて、映画ファンのマジョリティーがアカデミー賞から離れていくという危険性もはらんでいるのかもしれない。(ゴールデン・グローブがウハウハになるかもしれない)
批評家目線の賞なのか、観客目線の賞なのか、マネーメイキングフィルム賞賛の賞なのか。
どんな物事にも言えることだけど、そもそも”良質な映画”という定義はどこにもない。
ただ映画作りの一線を越えて、ただのお金作りと呼べる作品は、キリがないので映画という定義から外してもよいと思うが、そこまでの作品がオスカーを戴冠することは起こらないと思うので心配はしていない。
これらすべて、憶測に過ぎないのだけど。
世紀の大不況に直面するアメリカは、ポップコーン片手に我を忘れる露骨な映画もいいけど、「ハート・ロッカー」!のように地味だけど確実に効くボディ・ブローがびゅんびゅん飛んでくる映画を、欲しているのかも。
良い意味でも悪い意味でも、アカデミー賞は映画業界の未来を左右する大きな舵取りの役目を担っている。
だからここで多種多様な映画が受け入れられ、正当に評価されるのは、やっぱり嬉しいのです。
とにもかくにも、これからもアカデミー賞は色々な顔を見せてくれそうです。
【第82回米アカデミー賞・受賞結果】
作品賞は「ハート・ロッカー」!
監督賞はキャスリン・ビグロー(「ハート・ロッカー」)!
主演女優賞はサンドラ・ブロック!
主演男優賞はジェフ・ブリッジス!
外国語映画賞は「瞳の奥の秘密」!
編集賞は「ハート・ロッカー」!
長編ドキュメンタリー賞は「ザ・コーヴ」!
視覚効果賞は「アバター」!
作曲賞は「カールじいさんの空飛ぶ家」!
撮影賞は「アバター」!
音響録音賞は「ハート・ロッカー」!
音響編集賞は「ハート・ロッカー」!
衣装デザイン賞は「ヴィクトリア女王/世紀の愛」!
美術賞は「アバター」!
助演女優賞はモニーク!
脚色賞は「プレシャス」!
メイクアップ賞は「スター・トレック」!
短編実写賞は「The New Tenants」!
短編ドキュメンタリー賞は「Music by Prudence」!
短編アニメーション賞は「Logorama」!
脚本賞はハート・ロッカー!
主題歌賞は「クレイジー・ハート(原題)」!
長編アニメーション賞は「カールじいさんの空飛ぶ家」!
助演男優賞はクリストフ・ワルツ!
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