「インビクタス」
クリント・イーストウッド×モーガン・フリーマンといったら、オスカー鉄板の名コンビである。しかし、残念ながら今年のオスカーへのノミネートはなかった。失礼な話、ちょっと納得がいく。イーストウッドの持つ安定したクオリティーはあるが、推測の域を超えない、平凡な物語に感じたからだ。だって、あの有名なネルソン・マンデラを描くのだから、皆が知っていることを超える、それを作り手は覚悟しないといけない。
オスカーを獲った「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」の名コンビ、クリント・イーストウッド監督とモーガン・フリーマンが三たびタッグを組んでいることで話題の本作。南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領と、同国代表ラグビーチームの白人キャプテン・ピナールが、アパルトヘイトによる人種差別や経済格差を乗り越え、ワールドカップ制覇を成し遂げるまでの軌跡を描いた物語。
この題材はこの2人にとってパーフェクトだし、映画化するダイナミズムがある。だがしかし、この手の話はどうしても説教っぽくなりがちだ。仕方がない。ある意味、説教であることは事実だからだ。もちろんこの実話自体、信じられないようなミラクルのお話なのだけど、あまりにもマンデラの成し遂げていることが著名すぎて、なんとも予定調和に感じてしまう。現代の贅沢病か。
しかしながら、マンデラの生涯をただ単純に伝記映画化したわけではない。同国ラグビーチームの再生という、捻りが本作にはある。実はこの企画自体は、フリーマンがイーストウッドに持ちかけたそう。当初、マンデラの自伝を映画化する企画があったとき、マンデラ自身が演じてほしい俳優にフリーマンを指名している。それを受けて、フリーマンはずっとマンデラを演じるときを待っていた。自伝の映画は生半可なものじゃないので難しかったのだが、この”ラグビーチーム再生”を主軸にすることで、物語としての瞬発力とユニークさ、尺とコンテンツの具合もちょうど良かったというわけだ。名監督のもとには、名プロデューサーが集まるのだなと再認識。それともその逆か。どちらにせよ、裏方を含めたチームワークが要なのだ、この映画のラグビーチームのように。
これでイーストウッドは黒澤明とに並ぶ30作品を撮り終えた。御歳80、すでに次回作は決まっている。
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