「抱擁のかけら」
スペインの奇才ペドロ・アルモドバルが、彼のミューズであるペネロペ・クルスを主演に迎えて描く、純度高めのラブストーリーである。ペネロペはこれまでに、「ライブ・フレッシュ」「オール・アバウト・マイ・マザー」「ボルベール/帰郷」と、これで4度目のアルモドバル作品への出演となる。まるで2人は、ティム・バートン×ジョニデ、ウッディ・アレン×スカヨハ、イーストウッド×フリーマンのように相思相愛の様子だ。
相手役を務めるのは「バッド・エデュケーション」のルイス・オマール。14年前に事故で視力を失った元映画監督のマテオ・ブランコは、その事故以来ハリー・ケインというペンネームで物書きの仕事をしていた。同時に人生をかけて愛した女性レナの記憶も封印していた彼だが、それを語るときがやってくる。
ひとがひとを愛するという、普遍的で平凡で掴みどころがなくてありきたりのことを、アルモドバルが描くとこうなる。楽しくて悲しくて美しくて醜い物語になる。彼のその着眼点と表現力が素晴らしいと思う。ただ時間をなぞり、ひとの歴史をなぞり、それを語っているだけなのに。本当にストーリーを愛しているし、キャストを愛しているし、作品を愛しているんだなぁと思わざるを得ないのだ。「トーク・トゥー・ハー」ほどの刺激はないにしても、完成度は高い。彼の映画の不思議な魅力は、調律されていない楽器で1曲見事に奏でてしまうような、アンバランスさのバランスの取り方が天才的なのだ。
そして、スペインの役者がかなりいい。さすが情熱の国。ペネロペは相変わらず美しいけど(彼女は歳を増すごとに美しくなる)、美男美女はほとんど出てこない。美女ブサイクビッチたらしなどがマーブルして美しい色彩を放つのだ。そのマーブルが何よりいちばん美しいのだ。
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